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 日頃はスマートプロセス学会の活動に対して、会員皆様のご高配・ご支援を賜り厚く御礼申し上げます。

 本会は1975年に発足しました高温学会(社団法人認定は1977年2月)を原点に、2012年に現在の名称に改組・改称されました。

 スマートプロセス学会の目的は、定款に謳われておりますとおり、「高温から低温ならびに重厚長大から軽薄短小に至る広範囲の製造および接合などにおける先進的および環境・エネルギーに配慮した革新的ものづくりプロセスに関わる学術・技術の普及と進歩発展に寄与すること」にあります。非常に幅広い科学技術分野をカバーすることになりますが、多様な人材と知の交差は科学技術の新機軸を生み出すために極めて効果的です。本会の強みは、幅広い科学技術分野をカバーしているがゆえ、異分野融合的な研究・開発を探求するとともに、そのために必要な人材を育成する土壌が自然と育まれているところにあります。ものづくりプロセスに関わる学問と異分野技術の交差、そして、それらの情報交換の場を提供し、もって未来に輝く豊かで安全なスマート社会に資することが本会の夢であります。

 本会の掲げる目的、そして夢は、科学技術の新機軸の創出を期待されている現代の潮流に乗っているものと確信しています。しかしながら、益々の発展と展開をはかるには継続的で弛まぬ改革の精神と努力が必要であります。会員の皆様には、本会の更なる発展のために、より一層のご支援とご高配を賜りますよう、心からお願い申し上げます。

2026年学会誌1月号掲載「學海」

  「総合知」を生み出す場とは
                                                          田中 学

 昨秋、大学の関係者とともに和歌山県の高野山を訪ねる機会があった。和歌山生まれ和歌山育ちの筆者にとっては、高野山は子供の頃から幾度となく訪れた、馴染みの深いところである。ただ今回は、生まれて初めて高野山の宿坊に泊まる体験を得て、お寺のご住職からたくさんのお話を伺う機会にもなり、筆者は高野山を知っていても高野山のことはまったく知らなかったことを知る小旅行になった。その中で感銘を受けた1つが奥の院の巨木林である。数キロに及ぶ参道は鬱蒼とそびえ立つ幾重の巨木に囲まれ、足下には思い思いの所に建てられた数多くの供養塔や慰霊碑が淡い光を受けて悠久の眠りに就いたような神秘的な静けさに包まれている。紅葉のベストシーズンでありながら、奥の院の参道は深緑の中で森閑としているのである。この巨木林は和歌山県の天然記念物と国の特定母樹林に指定されており、その多くは樹齢数百年のスギである。そして、この巨木林は1千年の時を経ながら信仰の形態として献木され育まれた人工林なのだそうである。筆者が1つの巨木の根元に立ってその巨木を見上げると、太い幹が空に向かって垂直に立ちのぼり、遙か上方で樹冠が隣の木々の樹冠と競い合いながら陽の光をもらっているように見えた。ご住職に促されて根に近い太い幹をよく観察してみると、1本のスギの木ではなく、複数の木の個体が癒合していることがわかった。十分な陽の光が届き難い参道において、植樹された若い下層木が古い上層木と癒合することにより、古い上層木の通水機能を向上させる代わりに、古い上層木は樹冠の光合成によって得られたエネルギーを若い下層木に輸送することで日当たりの悪い下層木の成長を促進しているそうである。よくよく周りの巨木林を見渡すと、そのほとんどが癒合により1つ1つの巨木を成しているのに気付かされた。永年に亘る献木によって人の手が加えられた人工林であるが、林学の常識とは相容れない形で植樹され、自然の力により育った巨木林だったのである。

 さて、学術に目を向けると、学問の体系化を表現するために基礎学問が太い幹を成し、そこから枝葉となって多様な応用分野が広がり、大きな樹冠となって成長していく図をよく見かける。一方で、サーキュラーエコノミーやカーボンニュートラルの実現を背景に、地球規模の大きな課題をはじめ現代社会が抱える課題は数多くあるものの、それぞれの課題が非常に複雑であるため1つの学問で解決を見出すのは難しい。すなわち、社会実装に近い課題になればなるほど、幾つかの基礎学問が育む個々の「知」が統合して「総合知」を創り、今までにない観点と切り口から課題解決に臨むことが必要である。それは高野山の複数の木の個体が癒合しているように、長年に亘って人類が築き上げてきた個々の学問分野の「知」が「総合知」となって樹冠を成し、社会からの光を受けて課題解決のための機能を果たし、社会に新鮮な酸素を提供するかのように、社会の発展のために貢献することが必要である。木の癒合のためには植樹の際に木と木の適度な距離が重要だそうである。学術においても個々の「知」と「知」を育みながら「総合知」を生み出すためにはよい距離感と場が必要に思う。

 スマートプロセス学会では、レーザプロセス部会、アディティブ・マニュファクチャリング部会、環境・エネルギープロセス部会、エレクトロニクス生産科学部会が地球全体の包摂的かつ循環的な社会やカーボンニュートラルの実現を目指し、多様な活動を展開している。本会は昨年創立50周年を迎えたが、伝統的に学際的研究を基軸に多様な専門分野の「知」を繋ぎ、若手研究者や次世代人材といった「人」を育て、学術と産業そして社会を紡ぐ「ハブ」としての役割を果たしてきた。今後、本会は学際的学会として「知」と「知」のよい距離感を持って「総合知」を生み出す場を提供することで社会の持続的な発展に貢献していきたいと思う。

 末筆ながら、会員の皆様にとって良い一年になりますよう、心よりお祈り申し上げますとともに、スマートプロセス学会の更なる発展のため、より一層のご支援ご高配を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。


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